東京メトロ有楽町線、副都心線では、有楽町線開業当初から運用されている7000系と、副都心線開業前後に投入された10000系の2系列が運用されている。このうち7000系は1974年~1989年製で、2020年現在、製造後31年~46年と車齢が高くなっている。このため、東京メトロは、7000系の置き換え用として17000系を導入することを決定した。17000系は7000系と同数の10両編成6本と8両編成15本が導入される予定で、2021年2月に運用入りする予定になっている。
2020年11月現在、17000系はまだ営業運転に投入されていない。一方で、7000系のうち、普段は新木場車両基地に姿を見せることのない7115Fが先日新木場に入場したとの情報があった。7115Fの今後の予測も含め、7000系から17000系へ置き換わる途中で起こりうることを予想することにした。
17000系の導入ペースについて
17000系は2021年2月から営業運転に投入されることになっている。10両編成は10000系などを製造した日立製作所製、8両編成は日比谷線向け13000系などを製造した近畿車輌製で、10両編成が先に投入されることになる。既に17101Fと17102Fは試運転に供されており、17103Fも製造メーカーから発送済みである。17000系の製造は2022年度までかかる見込みとなっており、7000系と17000系は1年以上共存することが予想される。
7000系の製造時期について
まずは、7000系の製造年を確認したい。
次車区分 | 製造年 | 該当する車両 | 備考 |
1次車 | 1974年 | 7101F~7119F | 5両編成で導入 |
2次車 | 1980年 | 7120F | 5両編成で導入 |
3次車 | 1983年 | 7121F~7126Fと7101F~7120Fの増結用中間車 | 有楽町線が10両編成化 |
4次車 | 1987年 | 7127F | |
5次車 | 1988年 | 7128F~7132F | |
6次車 | 1989年 | 7133F・7134F |
以上の表には、副都心線開業に対応せず2010年までに除籍された7106F~7108F、7111F、7112F、7114F、7117F、7121F~7126Fも含んでいる。7101F~7120Fが初期編成、廃車になった7121F~7126Fを挟んで、7127F~7134Fが後期編成と区分していいだろう。7101F~7120Fは副都心線開業より前にB修が施工され(7108F、7111F、7117Fを除く17編成はVVVF化も実施)、7127F~7134Fは副都心線対応とB修を同時に施工している。次に、どの編成が8両編成で、どの編成が10両編成なのかを確認したい。
10両編成 | 7101F、7102F、7104F、7105F、7110F、7118F |
8両編成 | 7103F、7109F、7113F、7115F、7116F、7119F、7120F、7127F~7134F |
以上のように、10両編成は全て初期編成で、後期編成は全て8両編成になっている。このようになった理由として、10両編成のうち7102Fを除く5編成はVVVF化の時期が遅かった分機器が新しかったことや、8両編成化に際して余剰廃車の発生が避けられないことを利用し、B修を同時に施工する後期車両を8両編成化の対象にすることでB修の対象車両を減らす意図もあったと思われる。なお、7128F、7131F、7132Fの機器類は、8両編成化で余剰になった初期編成のものが流用されている。
余談ながら、7000系初期編成のうち、10両編成のまま改造された編成、8両編成に短縮された車両、改造されず廃車になった車両と明暗が分かれた理由ははっきりしているため、それについても解説しておきたい。先述のように、7102Fを除く10両編成のまま副都心線対応改造が行われた5編成は5M5T化が行われた後期VVVF化グループだった。8両編成化が行われた7編成は2レベルインバータ方式を採用した中期VVVF化グループで、6M4Tから4M4Tに改造されたため、電動車ユニット7組分の機器が後期編成の更新時に流用可能となった(実際に流用されたのは6組分だけ)。廃車になった編成のうち、7106F、7107F、7112F、7114Fは3レベルインバータ方式を採用した初期VVVF化グループで、7102Fもこのグループに属していたが、副都心線対応改造時に他の10両編成に合わせるため機器更新が実施されている。7108F、7111F、7117Fは、1次車の機器を他の編成のVVVF化改造で捻出した3次車の機器に換装していた。
10両編成が先に置き換えられるとは限らない
17000系は10両編成の導入が先に行われることになっている。また、7000系も10両編成は全て初期編成であることを考えると、先に置き換えが行われても不思議はない。しかし、8両編成にも初期編成は存在しているし、後期編成の一部(機器流用車)は10両編成よりも古い機器を搭載している。そもそも、1年強で全て置き換えられることになるので、経年の差を強く意識する必要もないだろう。実際には、車両の状態の良し悪し(故障頻度など)や、検査期限を考慮して廃車順が決まると思われる。
運用面では、8両編成と10両編成は共通運用化できない。特に、直通運転先の東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線の各駅停車しか停車しない駅は10両編成に対応していないので、8両編成の運用を10両編成が代走することは不可能である。有楽町線内と、東武東上線志木駅以北に乗り入れる列車も全て10両編成で運用されているため、10両編成の運用を8両編成が代走することも難しいと言える(東急車の運用で実績があるが…)。そのため、一見すると10両編成が8両編成を置き換える、逆に8両編成が10両編成を置き換える、というのは難しいように思えるし、製造予定数が7000系と同数になっているのでダイヤ改正で運用が変化する計画があるとも考えにくいが、しかし、実際には10両編成の17000系が8両編成の7000系を置き換えることは、間接的にだが可能である。
実は、10000系のうち5編成(10101F~10105F)は、8両編成が不足した時に備えて、容易に中間車2両を抜き取れる構造になっている。副都心線開業時には7000系の改造が終わっていなかったため、その後も東横線との直通開始前の東急線内試運転及び先行営業時や、その他突発的な事情などで10000系が8両編成になって運用されたことがある。つまり、10両編成の17000系が運用入りしたタイミングで、10000系を8両編成化すれば、8両編成の7000系を置き換えることが可能なのである。そして、8両編成の17000系が運用入りしたタイミングで8両化されていた10000系を10両編成に戻せば、10両編成の7000系を置き換えることも可能となる。
実際の置き換え順はどうなるか
7000系の置き換え順を予測するに当たって、やはり検査期限は重要になるだろう。検査期限に余裕を持った状態で廃車にすることはできるが、検査期限が切れた車両を運用に投入することはできないからだ。勿論検査を通す可能性もあるが、検査期限が近い車両は早期に廃車になる可能性が高い。7000系の検査は綾瀬工場で行われるので、各編成が直近で綾瀬工場を出場した時期をまとめた(Twitter他Web検索等で情報を収集)。なお、一部情報の正確性に欠ける編成がある。
編成 | 出場回送日 |
7109F(8両) | 2017年3月31日 |
7128F(8両) | 2017年5月上旬頃 |
7113F(8両) | 2017年8月24日 |
7101F(10両) | 2017年11月2日 |
7115F(8両) | 2018年1月上旬頃 |
7110F(10両) | 2018年3月1日 |
7127F(8両) | 2018年4月中旬頃 |
7129F(8両) | 2018年6月中旬頃 |
7119F(8両) | 2018年8月中旬頃 |
7130F(8両) | 2018年10月18日 |
7118F(10両) | 2019年2月15日 |
7131F(8両) | 2019年5月中旬頃 |
7120F(8両) | 2019年6月29日 |
7132F(8両) | 2019年8月8日 |
7116F(8両) | 2019年10月29日 |
7133F(8両) | 2020年1月30日 |
7134F(8両) | 2020年5月1日 |
7102F(10両) | 2020年5月25日 |
7104F(10両) | 2020年7月7日 |
7103F(8両) | 2020年9月18日 |
7105F(10両) | 2020年11月2日 |
以上の表では、7109F、7128F、7113Fが全ての10両編成より直近の検査が古い。17000系8両編成の登場は2021年度からになるため、これら3編成は検査期限が17000系後期編成の登場までもたない可能性がある(7000系8両編成の検査周期は約3年半)。一方で、10両編成の7102F、7104F、7105Fは今年に入ってから検査が実施されている。7118Fも2019年施行である。もちろん、検査時期の古い編成は、今後検査が実施される可能性も否定できないが、7101Fと7118Fの間にも5編成の8両編成が含まれている。このことを踏まえると、置き換え進行中のタイミングで8両編成の10000系が登場し、17000系の10両編成が間接的に8両編成の7000系を置き換える事例が生じることになりそうだ。
おわりに
先日、8両編成の7115Fが和光検車区から同新木場分室(新木場CR)まで回送された。この編成はしばらく運用入りしていなかったことを考えると、車両の状態があまり良くない可能性がある。17000系の営業運転開始は2021年2月からの予定で、まだ3ヶ月あるが、廃車の可能性は否定できない。丸ノ内線の事例では、2000系が2019年2月に運用入りする4ヶ月前に、02系から最初の運用離脱が発生していたからだ。元々、8両編成は運用数12に対して配置数15で3編成の余裕があり、7115Fが離脱していても十分に運用が回っている。また、置き換え期間中は7000系は検査を通さず廃車、17000系はまだ検査時期ではないとなれば、検査予備を一時的に削れるので、廃車作業が先行することは十分に考えられる。
しかし、7115Fが廃車になったと決めつけるのは時期尚早だろう。何らかの改修や調整、あるいは17000系の留置スペース確保のための疎開という可能性もある。運用離脱している間は「休車」に指定しておけば、検査期限をその分だけ延長できるので、置き換えスケジュールの調整のために特に問題のない車両が休車になるということは、他の置き換え事例でもしばしば見られるからだ。
今後、7000系が廃車になったと判断するタイミングは、「部品の取り外しが開始された時」とするのが良いだろう。特に10両編成の場合は、定期運用で新木場に入庫した後、他の10両編成が回送で新木場に送り込まれて車両交換が実施され、7000系はそのまま運用離脱というパターンもありえなくはない(廃車回送の代走)。
注意
この記事に掲載された情報は2020年11月時点のものです。今後、状況が変化する可能性があります。また、情報が誤っていたことによって損害等が発生した場合、当ブログ側は責任を負いかねますので、特に最新の情報を集める場合はご注意ください。